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父親を何者かに殺され、自身も刀傷を負って火事の中救出された祐一郎。
住み慣れた地を離れて伯母の家に身を寄せるも、事件を追ううちに耳に入ってくる謎の言葉――クナト。
父は何故、誰に殺されたのか。クナトとは何を示す言葉なのか。
失われた記憶を求め、祐一郎は従兄の青年と共に事件を辿っていく。
記紀神話を題材とした、推理と伝奇の入り混じる現代物の作品です。
私はさほど記紀神話に詳しいわけではないのですが、とても面白く読むことができました。
知っている神さまの名前が出てくると何だか嬉しくなりますし、そんなに堅苦しいお話ではないのですが、勉強にもなるなぁと読みながら思いました。
そうそう! この作者さまの書かれる文章も、すごく好きです。日本語の美しさを再認識させられました。
きらきらしいという意味ではなく、程よい重さの単語を絶妙なセンスで使われるというか――情緒の感じられる文章は、読んでいてもとても気持ちのよいものだと思います。
また、謎が解き明かされていく過程も、どきどきして楽しいものですね。推理物の醍醐味です。
この作品の本編は男性の方でも読んでいただける内容なのですが、本編後の日々を綴った番外編(地下書庫に掲載されています)には、女性向けの描写があります。そういったジャンルの苦手な方は、ご注意ください。
6月6日が誕生日――ただそれだけを条件に、『運命』を司る貴人は二人の継承者候補を選んだ。
理不尽とも思える状況に流されて、気がついた時には響は見知らぬ世界へと下り立つことに。
たった一人の生き残りの騎士とともに、死にゆこうとしている世界を蘇生させる旅を始めるが、現実はそんな響へと過酷に降り注ぎ――。
少女が世界を救う旅に出る――それだけを取れば、よくある異世界召喚系の王道的筋書きです。
が、あらゆる意味でこの作品は既存のそれらと一線を画しているように思いました。
主人公である響が旅をする世界は、死に絶え滅ぶほんの一歩手前にあります。いえ、既に一度滅んでしまったと言ってもいいかもしれません。
そんな世界を、人々を生き返らせるために響は決意をするわけですが、彼女は己に圧し掛かる重圧や苦難に常に押しつぶされそうになっています。
そんな響の心の動きや、彼女が抱く負の感情が、とてもリアルに感じられる作品だと思います。
彼女が辛い状況に追い込まれるたびに応援したくなり、いつか響が本当の意味で健やかな笑顔を浮かべられる時が来るといい、と。そう願っています。
さて、一応この作品は恋愛も絡んでくるらしいのですが、今のところ響にも周りの人物たちにも、そんな心の余裕はなさそうなんですよね。
そこのところもまた、今後の展開が楽しみなファクターです。
…お相手はやっぱりあの人でしょうか。特にお気に入りのキャラクターだけに、ものすごーく期待しています!(笑)
同じく連載中の作品「花術師」「She&Sea」もオススメです。前者は魔術師の少女が主人公、後者は海賊の出てくる異世界迷い込み系です。
(掲載サイト:Sneak Preview せんだ恵澄様) 長編 完結 ※閉鎖されました
全校生徒わずか五人、綾羽と要はそんな小学校に通う6年生。
マイペースな綾羽は卒業式を目の前にしても相変わらずで、要はそんな綾羽にいつも振り回されてばかり。
二人が卒業を迎えるその年の春、とある変化は訪れた――。
この作品はちょっと変わった形式で進んでいって、それがすごく面白いなと思いました。
作者さんが「ノスタルジックラブコメディー」とジャンル付けをなさっているように、どこか時代の波から取り残されたような田舎の小さな町が舞台になっていて、読んでいて不思議と懐かしさを感じるような、そんなお話で。
語り手たちのキャラクターも素敵で、その個性豊かな語り口が毎回いい味を出してました!
わが道を行くタイプの綾羽と、彼女の行動をハラハラしながら見守るフォロー役の要。
この二人の会話も、時々全然かみ合ってなくて、ものすごく笑えました。要が可愛かったです。いじましいというか、何というか(笑)
綾羽みたいにちょっとズレたようなパワフルな女の子も大好きです。
(掲載サイト:ABOUNDING GRACE BUTAPENN様) 長編 完結
亡くなった工学博士の夫が、長年心血を注いで研究していた存在。
成長する心を持った人間そっくりのロボット・セフィロトと彼の保護者となる女性の、SF恋愛ストーリー。
私は根っからの文系人間で理系には疎いのですが、SFというジャンルが好きです。
今自分が生きている現実社会からいくばくかの、またはとても永い時を経て辿り着く未来の世界。異世界や空想の世界を描くファンタジーとはまた違う楽しさがそこにはあると思います。
この作品の舞台となる時代では、人間が生活する上でロボットという存在が欠かせないものとなっています。一般家庭にも人工知能を搭載したホームコンピュータがあり、街を歩けばロボットが店員を勤める店がある。
そんな中で生み出されたセフィロトという青年の姿をしたロボットは、人間の子どものように経験によって様々なことを覚えていきます。主人公である胡桃との生活の中で少しずつ精神的に成長していく彼は、それこそ本当に人間の幼児のようで、何だか可愛らしかったです。
もしかしたら、お子さんのいらっしゃる方には、もっとよくその成長の過程がリアルに感じられるのかもしれないなぁと思いました。
セフィロトと胡桃の間にはたくさんの問題が起きてきますが、それらを互いに乗り越えて、生活を共にすることで絆を深めていく二人の間の雰囲気に癒されます。特に序盤ではセフィロトがまだ幼いこともあって、ものすごくほのぼのとしてるんですよね。
ただ読んでいるだけでもそうですが、絵として脳内で想像すると思わず和んでしまうような光景もあって、とても楽しく読むことができました。
こちらのサイトさまでは他にもFTや現代ものの長編も掲載されていますが、短編も豊富で面白いものばかりなのでお薦めです。
他国への侵略の歴史を持つ大国・ネファンカ。
不毛な毎日に飽いていた国王アムネリアの人生は、敗戦国の王子であるラダメスとの邂逅により流転していく。
どこか古代エジプトを髣髴とさせるような、異世界戦記もの。
とはいえ恋愛要素も相当なものでした。アムネリアとラダメスのラブロマンスも含めて、とにかく波乱の展開がストーリーをぐんぐんと盛り上げ引っ張っていく、そんな印象を受けましたね。
最初から最後まで怒涛の展開、というのは何だかありきたりな表現になってしまいますが、やはりこういう作品は事件の連続するスピード感が楽しむ要素の大きな一つだとも思います。
主人公であるアムネリアの成長具合も、最初と最後では目を見張るものがありました。
最初の頃の彼女の至らなさや未熟さ、無知さが、後になって彼女自身が成長しそれを自覚していくからこそ、際立っていく。読んでいて痛々しいと思えるほどに、彼女は悩み、辛苦を重ねながら着実に子どもから大人へと成長していったのだなと、読後にそう感じました。
ラダメスにしても、彼はいわゆる天才型の人なのですが、その裏の年相応なアンバランスさが隠されることなく描写されているのが印象深かったです。
この二人の互いに向ける感情って、ストレートなんですよね。時に方向性がぶれてしまうことはあっても、とにかく真っ直ぐ。
戦記ものが苦手な方でも、恋愛ものとして楽しんで読める作品だと思いました。